甲飛喇叭隊 第十一分隊 News Letter 第13号
2015年10月13日 発行
 みなさんこんにちは、甲飛喇叭隊 第十一分隊です。
 10月に入り、爽やかな秋晴れを満喫されている事と思います。関東圏では天高く澄み渡る青空を見上げると、時折白く輝く飛行機が見えます。悠々と空を行く姿に旅情をそそられる事もあるのではないでしょうか。

 旅には最適なシーズンのこの頃、毎年恒例の軍歌祭がいよいよ今週末10月17日(土)に迫って参りました(※終了)。 昨年までは日本青年館で開催されておりましたが、建物の老朽化に伴い開催場所を日本消防会館(ニッショーホール)に移し、名称も「新生第一回帝國陸海軍軍歌大演奏会軍装会」として催行される事となりました。 私たち第十一分隊も、今年も勢い新たに出演いたします。 どうぞ皆様お誘い合わせの上おいで下さいませ。

 さて、飛行機とひとくくりに言えども、その使用用途によっていくつかに分類できるのは皆さんご存知かと思います。先述の場合多くは旅客機なのですが、その他には輸送機や練習機など、様々な機体が大空を西に東にと行き交っています。 今回お送りするコラムは分類上「戦闘機」に入る、日本では最も有名な機体について。遊び心溢れる内容でお送りいたします。

 一服の時間、お休み前の一時、どうぞお供にお読み下さい。
<仮説、本土上空防空戦、零戦の可能性について>

「零戦」正式名称「零式艦上戦闘機」
日本人ならば誰もがその名を一度は耳にしたことがあるであろう。
日本海軍が世界に誇る当時世界最強の戦闘機。
その卓越した操縦性能、強力な武装、そして単座戦闘機の常識をくつがえす航続力を武器に日本海軍の快進撃を支えた。
中国重慶上空に於いて第十二航空隊の零戦十三機が中国軍のイー15、イー16戦闘機二十七機を相手にその全機を撃墜し、味方の損害はゼロという輝かしい初陣を飾ったのを皮切りに、ハワイ作戦、ウェーク島攻撃、比島航空撃滅戦、マレー、シンガポール航空戦、蘭印航空撃滅戦、インド洋海戦、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦と日本海軍の主要な戦いに参加している。

しかし、ミッドウェー作戦に於いてダッチハーバーを攻撃した零戦一機がアクタン島に不時着し、米軍の手に落ちた。
米軍はこれをテストし、零戦の性能は全て米軍の知るところとなった。
米軍は新型機グラマンF6Fヘルキャト、ロッキードP38ライトニング、ボートF4Uコルセアを次々と繰り出し零戦の絶対的優位は失われ苦戦を強いられる事となる。
零戦に代わる新型機の登場が待ち望まれたが、その開発は一向に進まず、この急場を凌ぐため零戦の改造による性能向上を図った。
21型以降22型、32型、52型等の改良型が登場したが、どれも戦局をくつがえす程の性能は得られなかった。
当時零戦の性能を少しでも向上させるべく、開発、改造に携わった技術者の苦労は想像を絶するものであったろう。

もし自分が零戦の開発や改造を担当する立場であったとしたら、どうしていたであろう。
そこで自分が現在の知識を持ち、当時にタイムスリップし零戦の改造をするという想定で、こんなシュミレーションをしてみました。

次のような命令を受ける。
「敵の艦載機が連日各所を空襲しており零戦でこの敵を撃退しなければならない。そこで小規模の改造で米機に対抗できる機体に作り上げてくれ。アメ公に一泡吹かせてやろう!」
さあ、こんな命令を受けたとしたら・・・
皆様も一緒に考えて下さい。



1、設定

 ・太平洋戦争末期
 ・搭乗員の大部分は未熟な技量
 ・来襲する米艦載機の迎撃
 ・即戦力重視のため大規模な改造は不可



2、機体選び

零戦は幾つかのタイプがあります。
太平洋戦争初期から中期に活躍した21型。
21型の栄12型発動機から栄21型発動機に換装し、パワーアップと翼端を切り詰めてスピードアップを図った32型。
更に翼長を元の12m翼に戻し主翼内に燃料タンクを増設し航続力の増強を図った22型。
発動機の集合排気管を推力式単排気管としてロケット効果を狙い再度翼端を切り詰め更なるスピードアップを図った52型。
この他に幾つかの型がありますが代表的なこの4つの型から選びたいと思います。
私が選ぶのは52型です。
ではなぜ52型なのか?。
零戦各型の中で21型が最も零戦らしい戦いをしたと言われる事が多いですが、零戦がデビューした当時、その性能は他国の戦闘機を圧倒していた。
その状況のまま日米戦に突入したのである。
更に当時の搭乗員の技量は世界トップレベルであった。
まさに最高の条件で戦えたのである。
しかし、末期の52型とのスペックを比較してみると、全てに於いて52型が21型を上回っている。とくに主翼の外板の厚みが増して
剛性が向上し弱点の一つである急降下性能が向上している。
そのデータを重視し、52型を選択します。



3、機体の改造

機体が決まり、いよいよ改造に移ります。
まず零戦の最大の武器の一つである航続力を捨ててしまいます。
日本本土上空での空戦を想定し、思い切って胴体内の燃料タンクのみとして翼内燃料タンクを撤去します。
これで軽量化と米機の攻撃を受けた際に火災となる割合を軽減できるはずである。
燃料搭載量が不足する場合は投下式増槽タンクで対応します。
空戦に入った場合は増槽タンクを投下して身軽になれる訳です。
その後は胴体内タンクに切り替えて空戦が行えます。
零戦のもう一つの武器である主翼内の20mm機銃2挺を撤去します。
なぜなら20mm機銃弾は直進弾道性能が非常に悪く、未熟な搭乗員には扱いにくく、敵機に命中させるには、ギリギリまで接近する必要があるが、これも中々難しい。
更に20mm弾は炸裂弾である。弾倉に弾が直撃すると大爆発してしまうのだ。
エースパイロットの坂井三郎氏(64機撃墜)によれば、昭和17年2月スラバヤの空戦に於いて、目前で中隊長の浅井大尉機が突然大爆発を起こした。しかし中隊長機を攻撃したはずの敵機の姿はどこにもない。
流れ弾が弾倉に当たったのだ。
こんな物騒なモノは撤去するに限る。
そこで撤去した20mm機銃の代わりに13mm機銃を両翼に一挺づつ装備することにします。
13mm機銃の利点は抜群の直進弾道性能と携行弾数の多さである。
20mm機銃の125発に対し、13mm機銃は230発搭載できる。
「ヘタな鉄砲も数射ちゃ当たる」である。
破壊力という点では20mm弾が勝るが、当たらなくては話にならない。
機首に装備している7.7mm機銃2挺も撤去します。
坂井三郎氏はそのスコアーの大部分は、7.7mmの弾幕で撃墜したと語っている。
7.7mm弾でも撃墜できるのであれば13mm弾でも十分撃墜は可能なはずである。
各機銃の重量は、20mm機銃37kg、13mm機銃28kg、7.7mm機銃11.5kg。
これで機銃だけでも41kgの軽量化をした事になる。
更に不要な艦着フック等も撤去します。
翼内燃料タンクも撤去した結果、おそらくは50kgに迫る軽量化ができたであろう。改造前に比べて格闘性能は格段に向上するはずである。



4、実戦

「敵の大編隊、接近中」の一報に二十機の改造零戦が迎撃のため離陸した。
半数は敵の進入が予想される高度より少し高めの四千五百付近に高度を取り、他の半数は高度千五百付近に布陣した。
「敵編隊発見」敵は三十機から四十機程度の編隊が幾つも接近して来る。
その中の最後尾の編隊に狙いを絞って接近するが敵もこちらに気付いて高度を取り、翼をひる返して一撃すると急降下で離脱して行く。
この時数機零戦が主翼に被弾するが燃料タンクを撤去したためか火を吹かない。
何とか敵の一撃をかわし追撃のため急降下に入る。
主翼の外板の厚みが増した52型は急降下も割と安定している。
一方の零戦隊は急降下で戦場を離脱した敵機を低空で待ち構えていた。油断している敵機に腹の下から襲いかかる。
腹の下から突き上げられ敵はパニックを起こす。
そこに上空から急降下して来た零戦隊が一撃をかける。
あちらこちらで乱戦が展開される事になる。
「相手はゼロだ、落ちついてやれば必ず勝てる」と思っている敵のパイロットは50kg近く軽量化し、グイグイ切り込んで機銃を射ちまくって来る零戦に「何か変だ。いつものゼロじゃない」と焦りだすだろう。
零戦はもし被弾しても、日本上空であるから不時着できる可能性は高い。
思い切り戦う事ができるのである。
一方米軍機は母艦まで帰らなければならず、被弾したら戦意を無くすに違いない。
改造零戦隊は、軽量化した機体と直進性の良い13ミリ機銃を駆使して互角以上の空戦に持ち込めたのではないだろうか?。



以上の事はあくまでも個人的な仮説に過ぎませんが、こんな事を考えてみるのも楽しいものです。
皆様なら零戦の何処をどのように改造するでしょうか?。