甲飛喇叭隊 News Letter 第48号
2020年9月22日 発行
 みなさんこんにちは、甲飛喇叭隊です。

 適切な対策を取るとある程度手足を伸ばせるようだと判明した事で、早春からの張り詰めていた緊張が若干解れてきたように感じます。「知は力なり」という言葉が示すように経験に基づいた知識は大切なものですが、この緊張を解く鍵はまさにここにあるのかもしれませんね。

 さて我々甲飛喇叭隊は、過日「報国515資料館」へ研修に伺いました。 今回の隊員によるエッセイはそこで感じた事を認めたものですが、資料館管理人・中村泰三氏の解説が筆を取らずにはいられないと感じさせる、まさに「知は力なり」が表す所だったようです。 甲飛喇叭隊HPには当日の画像も掲載しております。我々と一緒に訪れた気分で、一服の時間、お休み前の一時、どうぞお供にお読み下さい。
<報国515資料館 研修見学>


令和2年8月、甲飛喇叭隊は研修として報国515資料館を見学させていただいた。この資料館に展示されている零戦はガダルカナル島で発見された姿そのままの機体であり、70年以上前の姿をそのまま残している。今回は同館管理人である中村泰三氏より今回報国515号並びに零戦全般について様々なお話を伺うことができた。

資料館の名称である報国515というのはこの資料館に収蔵されている零戦の名前である。機体の胴体部にも報国-515(廣島縣呉産報支部號)と記載されており、この機体が呉市の産業報国会員が提供した資金で作成された献納機であることを示している。 献納式の様子は昭和17年3月21日の中国新聞に掲載されているが、この機体の落成日は胴体部に記載された製造年月日を見ると昭和17年3月31日となっており、献納式の日にこの機体はまだ工場の中で組み立てられている最中であったことがわかる。献納式に参加した人々は献納した機体を見る事は無かったが、代わりに記念の絵葉書が発行されたそうである。

実際に機体を見せていただくと、胴体部が骨格の上に外板を張ったシンプルな事な構造であることに驚かされる。その外板は使用されているリベットおよびネジを含めて滑らかな表面で、骨格も肉抜き穴の開いた軽量化を追求した構造となっており、まるでスポーツカーを思わせるような姿をしている。当時の技術者が零戦に高速性能と機動性を求めたことが骨格からうかがえる。

水平尾翼部分の羽布を張る箇所を見ると、可動部にわずか数ミリの隙間が空いておりそこに羽布が通されていた。この部分は後の五二型ではもっと幅が広くなっており、この数ミリの接合部を作ることが出来たのは二一型が高度な職人技をもって作成されていたことの証左であるとの事であった。

また現代の飛行機とは異なる点としてタイヤに溝が切られていない点があげられる。現在の旅客機のタイヤなどはまっすぐな溝が彫られているが、零戦を含め当時の戦闘機のタイヤは一切溝が彫られていない。舗装された滑走路であれば溝が彫られている方がよいが、未舗装の滑走路を使用する場合には溝が彫られていないほうが都合がよいとの事であった。
零戦が数多く所属したラバウルの基地も火山灰で覆われた滑走路であり、当時の飛行機の運用状況を垣間見ることができる。関連して、この零戦の機銃の薬莢受けは発見当時真っ白な粉で覆われていたそうである。その粉を分析にかけた所ガラス質を主体とする火山灰であり、この零戦もラバウルにいたことが確定している事であった。

水平尾翼の部分を見ると、翼に重なり光の当たらない部分とそうではない部分で胴体の色が異なる。光の当たらない部分は黄色がかった色をしており、そうでない部分は灰色をしている。この黄色がかった部分のほうが70年前の塗装に近いが、開戦直後の零戦の塗料は黄変を起こしやすく(胴体に塗布されたベンジルセルロースの結合材(バインダー)が黄変してしまう)、実際の当時の色は青みがかった灰色をしていたそうである。そして灰色の部分は黄変した塗料の顔料(防水塗料ではない)も落ちてしまった状態との事であった。塗料1つをとっても零戦が我々に語り掛け来る情報量はものすごく多く驚かされる。

興味深い点では増槽の構造である。増槽使い捨ての補助燃料タンクであるが、実物を見るとまずはその大きさと仕上げの丁寧さに驚かされると同時に、かなりの金属を使用して作られていることがわかる。増槽には木製と金属製があり用途によって使い分けていたとの事であったが、毎回これだけの金属を消費する増槽を運用する機体分用意すると考えると木製の増槽が作成されるのも納得のいく結果である。

他にも報国515号を含めゼロ戦に関する様々なお話を伺うことができたが、すべてを描き切ることはとてもできない情報量であり、続きは実際に報国515資料館に足を運んでいただきたい。

詳細は報国515資料館HPの方で開館日時が掲載されているので、ご興味のある方はご覧ください。

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